貝の和名と貝書
 貝の名前を図鑑で調べると、同じ貝でも図鑑によって学名が異なることがあります。 それは、学名が分類学的な研究成果を反映しているためであり、研究が進むにつれて 学名が見直されるのは仕方が無いことです。 一方、和名は貝そのものに付けられるため、一度定着すれば学名の変更にも影響されず 安定しています。

 現在、国内・国外を問わず多くの貝に和名が付けられています。コレクター向けの 貝の場合、「原色図鑑 世界の貝」(鹿間図鑑)や「世界海産貝類大図鑑」 (COMPENDIUM日本語版)で多くの外国種に和名が付けられました。 最近では海外の図鑑が国内で販売される際に、和名表が作成されます。 また、食用貝の場合は、国内に流通する際に独自の和名が付けられます。

 ところで、昔から知られている日本の貝は、どのようにして和名が付けられたので しょうか?
相模湾産貝類図鑑や各種の貝類目録を見ると、和名とともに和名の出典が掲載されて います。 たとえば「日本及び周辺地域産軟体動物総目録」にサザエやハマグリは以下のように 記述されています。



537. Turbo (Batillus) cornutus Lightfoot, 1786 サザエ(和鈔)

栄螺 サザエ

栄螺


1387. Meretrix lusoria (Roding, 1798) ハマグリ(目八)文蛤・浜栗





和鈔とは 本草和名鈔のことであり、目八は 目八譜を指します。 このような和名の原典となる書物のうち、江戸時代以前に著されたものを以下に紹介します。 残念ながら、この中で私が実際に見たものはほんの一部であり、殆どの内容はVenus誌の 金丸但馬氏の記事「本邦貝類書解題」「日本貝類学史」を参考にしました。 昔のVenusにはこうした記事の他、コレクター向けの記事も多く楽しいです。 図書館などで一読されることをお勧めします。

 金丸氏はこれらの記事の中で各書で使用されている和名の共通性ついて分析し、 各書が著される際に引用した書籍を推定しています。
こうした記事を集め、 引用関係を図にまとめてみました。 これを見ると、著作年代が不明の書籍についても、おおよその著作年を推定することができます。

浜栗 ハマグリ

浜栗

本草和名 深根輔仁著 918年頃
薬物の漢名の下に日本名の対訳を施したもので配列は新修本草に基づいている。 かつては日本における最古の薬物書、或いは和氣廣世の薬經太素に次ぐ第二の薬物書と言われてきたが、最近の 研究では本書の前にいくつかの薬物書が存在することが明らかになっている。
(http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper01/ChronoTabJpMed.html)
貝の名として25種(*)が出ている。記事は頗る簡単で、不明なものが少なくない。


*) 1牡蠣(カキノカイ)、2海蛤(ウムギノカイ)、3魁蛤、4文蛤(イタヤガイ444)、 5石决明(アワビ)、 5紫貝、5鮑魚(アワビ)、6紫貝(ムマノクボガイ)、6文貝、7馬刀(マテノカイ)、7馬蛤、 7「虫偏に坒」8貝子(ムマノツボガイ)、9田中螺汁(タツビ)、10蝸牛(カタツブリ)、11甲香(アキノフタ)、 11流螺、12珂「目偏に可」、12馬珂、12「虫偏に成」、13甲臝子(ツビ)、13栄螺子、13板螺、 13「魚偏に甘」、14小臝子(シタダミ)、15大辛螺肉(アキ)、16辛臝子(オオアキ)、 17累小辛螺肉(クロニシ)、18口廣大辛螺肉(オオニシ)、19白小辛螺肉(シラニシ)、20海髑子(ヤシ)、 21河貝子(ミナ)、22蚌蛤(タガイ)、23「虫偏 燕 頁」蛤、24「燕偏に鳥」蛤、25陳久蜆殻。




板屋貝 イタヤガイ

板屋貝



和名類聚抄(倭名類聚抄) 20巻 源 順著 930年?
勤子内親王の命を受け、和漢の書を参照して事物の和名を定めたもの。平安時代の百科事典。 貝の名として25種(*)が出ている。源 順(みなもとのしたごう)は平安中期の歌人。本書の編纂期には 弱冠20代であった。


*) 1 甲臝子 ( ツビ )、 2 榮螺子 ( サザエ  )、 3 石陰子 ( カセ )、 4 小臝子 ( シタダミ )、 5 河貝子 ( ミナ )、 6 石炎螺 、 7 大辛螺 ( アキ )、 7 蓼螺 ( アキ )、 7 赤口螺 ( アキ )、 8 小辛螺 ( ニシ )、 8 蓼螺子 ( ニシ )、 9 田中螺 ( タツビ )、 10 蚶 ( キサ )、 11 蚌蛤 ( ハマグリ )、 12 海蛤 ( ウムキノカイ )、 12 魁蛤 ( ウムキノカイ )、 12 豘耳蛤 ( ウムキノカイ )、 13 文蛤 ( イタヤカイ )、 14 馬蛤 ( マテ )、 14 蟶 ( マテ )、 14 馬刀 ( マテ )、 14 馬蛤 ( マテ )、 15 蜆貝 ( シジミカイ )、 16 白貝 ( オフ )、 17 貽貝 ( イガイ )、 17 黒貝 ( イガイ )、 18 紫貝 ( ウマノクボカイ )、 18 大貝 ( ウマノクボカイ )、 19 錦貝 ( ヤクノマダラガイ )、 20 海髑子 ( ヤシ )、 21 鰒 ( アワビ )、 21 鮑 ( アワビ )、 21 石决明 ( アワビ )、 22 蠣 ( カキ )、 23 貝蛸 ( カイタコ )、 24 蝸牛 ( カタツブリ )、 24 蹼螺 ( カタツブリ )、 25 寶螺 。




牡蠣

牡蠣




本草和名鈔 丹羽康頼著 970~984年
漢名、薬効、和名の他、一部の貝については産地、殻の特徴なども記載している。 貝の名として19種(*)が出ている。


*) 1 牡蛎 ( カキノカラ )、 2 真珠 ( ハマグリノタマ )、 3 石决明 ( アワビノカイ )、 4 海蛤 ( ハマグリノハシラ )、 5 文蛤 ( イタヤガイ )、 6 魁蛤 ( オウノガイ )、 7 鮑魚 ( アワビ )、 8 紫貝 ( ウマノクボガイ )、 9 縁桑螺 ( チイサキカタツブリ )、 10 齋蛤 、 11 蝸牛 ( カタツブリ )、 12 馬刀 ( マテノカラ )、 13 蚌 ( タガイ )、 14 螺 ( タツブ )、 15 貝子 ( ムキノクボカイ )、 16 蛤蜊 、 17 甲香 ( アキノフタ )、 18 蜆 ( シジメカイ )、 19 海螺 ( ウミツブ、ホラガイ )。




貽貝

貽貝

多識篇 5巻 林道春著 1631年
異邦の物産に邦産の名を当てたものなので随分無理もあるが、貝の名として 27種(*)が出ている。


*) 1 牡蠣 ( カキ ) 、 1 牡蛤 ( カキ ) 、 2 蚌 ( ハマグリ ) 、 3 馬刀 ( マテ ) 、 3 馬蛤 、 4 「虫偏に感の上」「虫偏に進」 ( タイラキ ) 、 4 「虫偏に感の上」蛤 ( タイラキ ) 、 5 蜆 ( シジミ ) 、 5 扁螺 、 6 石决明 ( アワビ ) 、 6 千里光 ( アワビカラ ) 、 6 紫貝 ( ムラサキカイ ) 、 6 鰒魚 ( アワビ ) 、 7 海蛤 ( ウミカイ ) 、 7 扽耳蛤 、 8 文蛤 ( マタラガイ ) 、 8 花蛤 、 9 蛤蜊 ( ハマグリ ) 、 10 蟶 ( マテ ) 、 11 擔羅 ( シラキハマグリ ) 、 12 車螯 ( オオハマグリ ) 、 13 魁蛤 ( アカガイ ) 、 13 魁陸 ( カイリク ) 、 13 尾壟子 、 14 車渠 ( オオミガイ、オウギガイ、ホタテガイ ) 、 14 海扇 、 15 貝子 ( タカラガイ ) 、 16 紫貝 、 16 文貝 、 17 珂 ( クツワガイ ) 、 17 馬軻螺 、 18 淡菜 ( ミルクイ ) 、 18 海「虫偏に陸の右」 、 18 東海夫人 、 19 海臝 ( バイ ) 、 19 流螺 、 20 梭尾螺 ( ホラノカイ ) 、 21 田臝 ( タニシ ) 、 22 蝸臝 ( ニシ ) 、 22 螺螄 、 22 泥螺 、 22 蓼臝 ( ニシ ) 、 23 海鏡 ( タイラギ ) 、 24 海燕 ( ウミツバメ ) 、 25 郎君子 、 26 相思子 、 27 鬼眼精 ( ニナノカラ ) 。





浄貞五百貝圖 吉文字屋 浄貞著 1688年
霊元天皇の命によってつくられ、宮中に献納された貝類図譜。 墨絵の書譜で1葉中に沢山の貝をまとめて書いてある。それぞれの貝に名前を付けているが、 解説は無い。名前は非常に独特で南方の産品が相当加わっている。 貝および関連生物の名として541品、467種が出ている。(*)

*) 1 月日介 、 2 姫蛤 、 3 馬鹿介 、 3 湊介 、 4 空尾介 、 5 ヨナキ 、 5 香螺 、 5 長螺 、 6 捻介 、 7 孔雀介 、 8 蝸牛 、 9 帆立介 、 9 板屋介 、 10 持介 、 11 姥介 、 11 鏡介 、 12 白介 、 13 雲介 、 14 タツボ 、 14 田螺 、 15 蜆介 、 16 櫻介 、 17 マダラ介 、 17 蜑介 、 17 餘泉 ( マダラガイ )、 18 榧介 、 19 黒介 、 19 眠介 、 20 圓介 、 21 紫介 、 21 飯櫃介 、 22 郭公介 、 23 鹿子介 、 24 花介 、 25 筵介 、 26 梅花介 、 27 礒介 、 28 ホタル介 、 28 筆介 、 29 クルス介 、 29 松介 、 30 釜介 、 31 身無介 、 32 矢根介 、 32 矢石 、 33 泥介 、 33 馬介 、 34 壺介 、 34 鬘介 、 35 海燕 、 35 蛸枕 、 36 楯介 、 36 衾介 、 37 美豆介 、 38 ツヅラ介 、 38 簾介 、 39 総角 、 39 圓座介 、 40 海馬家 、 41 杼介 、 41 梭介 、 42 唄 、 43 角片部 、 43 片部介 、 44 濱蔓 、 45 空蝉介 、 46 緑介 、 47 天狗介 、 48 烏帽子介 、 49 細螺 、 49 志太太美 、 50 翁介 、 51 塩折介 、 52 笋介 、 53 クカノ介 、 53 塩吹 、 53 車螯 ( スワハマグリ )、 54 百鬼介 、 55 烏介 、 55 江介 、 56 玉介 、 56 真珠介 、 56 蝶介 、 57 文殊介 、 58 鮫介 、 59 羽介 、 60 ヨメノ皿 、 60 子フト介 、 61 阿野介 、 62 馬刀介 、 63 珂 ( クツワ )、 63 冠介 、 63 轡介 、 63 鯨蠣 、 63 馬軻介 、 64 シトロ 、 65 紅介 、 65 大名介 、 66 溝介 ( ミゾガイ )、 66 折介 、 67 絲介 、 68 手襷介 、 69 猿頭 、 70 石蛤 、 71 紅葉介 、 71 馬ノクボ介 、 71 片介 、 72 奇蟲介 、 72 都介 、 73 烏介 、 73 黒介 、 74 ツベタ 、 74 ヘナタリ 、 74 甲香 、 75 時介 、 75 法螺介 、 76 鏡介 、 76 障子介 、 76 板介 、 77 八代介 、 78 高津介 、 79 忍介 、 80 安良湏介 、 81 蝮介 ( マムシガイ )、 82 蓑介 、 83 合介 、 84 [角羊の下に虫]ノ皿 、 85 勢 、 86 山椒介 、 87 落葉介 、 88 裏打介 、 89 瞿来介 、 90 千種介 、 91 塩津介 、 92 雀介 、 93 烏爪 、 93 爪介 、 94 蜷 、 95 高濱介 、 96 子安介 、 96 歯海 、 96 寶介 、 97 蛤 、 98 尾上介 、 98 鶉介 、 99 甲介 、 100 碪介 、 101 蠣 、 102 土負介 、 103 赤介 、 104 蝉介 、 105 傘介 、 106 石陰介 、 107 鴜介 、 108 八塩介 、 109 玉巻介 、 109 鳥介 、 110 千里介 、 110 蚫介 、 111 戎介 、 112 蕪介 、 113 嶋螺 、 114 懐介 、 115 刃介 、 116 蓋介 、 116 明介 ( フタガイ )、 117 チヒロ介 、 117 ヤクノマダラ 、 117 錦介 、 117 千色 、 118 [竹冠に羅]介 、 118 [目偏にト]介 、 119 海菊 、 120 冨介 、 121 賀貨介 、 122 破太志介 、 123 梭尾螺 、 124 サタヲカ 、 124 佐太遍 、 124 辛螺 、 125 角介 、 125 駒角 、 126 袖介 、 127 増穂介 、 128 久保介 、 129 モク介 、 129 鐙介 、 130 和禮介 、 131 盲介 、 132 立烏帽子 、 133 雛介 、 134 寸介 、 134 厴 、 135 波間柏 、 136 タイラギ 、 136 海鏡 、 136 玉珧介 、 137 紅螺 、 138 ササラ介 、 138 忘介 、 139 アカキガイ 、 139 黒介 、 139 姫イ介 、 139 貽貝 、 140 色介 、 141 面介 、 142 油介 、 143 横介 、 143 船介 、 144 於沙 、 145 核介 ( サネガイ )、 146 於呂 、 147 靭介 、 148 絲法螺 、 149 海爪 、 150 石帯 、 151 雲螺 、 152 ミル蛤 、 153 晶螺 ( セイラ )、 154 姫蠣 、 155 賂蛽 ( ロバイ )、 156 階戸 、 157 内介 、 158 鈴 、 159 礒蛽 、 160 白目介 、 161 練介 、 162 鹿雲 、 163 三浦介 、 164 名草 、 165 管介 、 166 登呂 、 166 白螺 、 167 綣介 、 168 藤津 、 169 玉砂 、 170 餘眠 ( アメ )、 171 嶌螺 、 172 鳴門介 、 173 姫螺 、 174 椎介 、 175 筋唄 、 176 津介 、 177 蚶 ( キサ )、 178 金絲介 、 179 合貝 、 180 海老介 、 181 妻介 、 182 鹿嶋介 、 183 口切介 、 184 稲介 、 185 姫合 、 186 姫蜷 、 187 栄螺 ( サタへ )、 188 九 、 189 河合 、 190 小臝子 、 191 尻高介 、 192 久嶋介 、 193 姫サタへ 、 194 八洲介 、 195 黒痣 、 196 独楽 ( コマ )、 197 砂吹介 、 198 目佐紫 、 199 淡吹介 、 200 湏部里介 、 201 瑠璃介 、 202 鎌介 、 203 養 、 204 菖蒲 、 205 片口 、 206 水巻 、 207 野田 、 208 鶴首 、 209 太貝 、 210 犀角 、 211 礎介 ( イシズエガイ )、 212 橘 、 213 乙子 、 214 要 、 215 花板屋 、 216 塩吸 、 217 塵唄 、 218 筒介 、 219 浮湏 、 220 岩手 、 221 形能 、 222 支湏 、 223 千鳥介 、 224 花形見 、 225 カタシ介 、 226 濱蟲 、 227 亀介 、 228 薄唄 、 229 賀紫 、 230 畝田螺 、 231 酢介 、 232 白鷗介 、 233 薦 ( コモ )、 234 畝唄 、 235 瓦介 、 236 乙介 ( オツガイ )、 237 苫屋介 、 238 口黒介 、 239 姫蜊介 、 240 登呂 、 241 鮠 ( ナマツ )、 242 縮介 、 243 黒江 、 244 帯 、 245 葛王 、 246 玉黍 、 247 濱[聿に皿] 、 248 古屋介 、 249 敷津介 、 250 鳥唄 、 251 姫片部 、 252 文介 、 253 眉造 、 254 袴介 、 255 柳介 、 256 角木 、 257 花蘂 ( ハナシベ )、 258 包介 、 259 布留 、 260 鏨介 ( ノミガイ )、 261 庇 、 262 水藻 、 263 久世介 、 264 日南 ( ヒナタ )、 265 揉 ( モミ )、 266 子ノ手 、 267 玉手螺 、 268 ママコ 、 269 碁石 、 270 飛蜂 ( ヒキウ )、 271 尾介 、 272 紡錘 ( ツム )、 273 波介 、 274 角螺 、 275 筋蜷 、 276 丁子 、 277 白丁子 、 278 福羅 、 279 小筋蜷 、 280 白砂介 、 281 姨口介 、 282 蜊介 、 283 鎧介 、 284 品介 、 285 白尾介 、 286 紐介 、 287 石陰子 、 288 小小妻介 、 289 曲介 、 290 三好介 、 291 海蛤 、 292 長洲介 、 293 菱介 、 294 棚無 、 295 熊 、 296 花[利に虫] 、 297 錺 、 298 蠧 ( ト )、 299 黒小介 、 300 [習へんに頁]貝 、 301 隈唄 、 302 沼介 、 303 室介 、 304 波太連 、 305 几 、 306 蔕 ( ヘタ )、 307 女螺 、 308 濃染 ( コソメ )、 309 豊津 、 310 角螺 、 311 増 、 312 尻切 、 313 志志螺 、 314 阿古目 、 315 黒保 、 316 烏唄 、 317 裡巻 、 318 疊唄 、 319 泥鏝 ( コテ )、 320 螻蛄 ( ケラ )、 321 保田 、 322 疣介 ( イボガイ )、 323 世古 、 324 浦向 、 325 姫阿良湏 、 326 百済 ( クダラ )、 327 柱唄 、 328 葉廣 、 329 星介 、 330 茗荷介 、 331 芋介 ( イモガイ )、 332 舌蛤 、 333 女郎 、 334 白子 、 335 志保 、 336 唐螺 、 337 虎介 、 338 宇田 、 338 白横 、 339 坊主 、 340 真背 、 341 連宝 、 342 海松子 、 343 鳥甲 、 344 巻白 、 345 二重 、 346 嶌牛 、 347 厚介 、 348 口立テ 、 349 鰐口 、 350 小佐 、 351 帯喰 、 352 姫机 、 353 水吸介 、 353 圓座 、 354 秩父 、 355 母衣 、 356 写介 ( ウツシガイ )、 357 女良 、 358 石巻 、 359 蜻蛉 、 360 松 、 361 紅巻介 、 362 蛍介 、 363 津口介 、 364 鼻九利 、 365 奈古 、 366 釼介 、 367 枕介 、 368 乳介 、 369 蘓枋介 、 370 田地介 、 371 玉江介 、 372 志部介 、 373 志例 ( シレイ )、 374 浪介 、 375 八衣介 、 376 練雀 ( レンジャク )、 377 生貝 、 378 クシケ 、 379 壽介 ( ジュガイ )、 380 穣 ( イカ )、 381 花蜊 、 382 銀杏 ( イチョウ )、 383 犬介 、 384 沓蜊 、 385 根緒 、 386 椿 、 387 瑞白 ( ハタシロ )、 388 嶌形能 、 389 嶋葛 、 390 湏田 、 391 燕介 、 392 玉葛 、 393 宮方 、 394 袋螺 、 395 [角羊の下に虫] 、 396 干潟介 、 397 形白 、 398 黒藻 、 399 横介 ( ホウガイ )、 400 逢介 ( アウガイ )、 401 於不 、 402 羽子介 、 403 平介 、 404 籮介 ( フゴガイ )、 405 雲母介 、 406 印南介 、 407 瀑布介 、 408 牛沓 、 409 生海子 、 410 机介 、 411 荒目介 、 412 荔支介 、 413 女鮫 、 414 宮代 、 415 源助介 、 416 屋形介 、 417 竹子介 、 418 海器 、 419 蓑蟲 、 420 左介 、 420 蜻 ( ヒタリ )、 421 海兎 、 422 [果に衣] 、 423 杼 ( トチ )、 424 唇螺 、 425 志登呂 、 426 田尻 、 427 千襷 、 428 線介 、 429 錦螺 、 430 車介 、 431 鼠介 、 432 長介 、 433 赤螺 、 434 鰭 ( キ )、 435 畒介 、 436 松河 ( マツカ )、 437 三繰介 、 438 禿介 、 438 肌荒蛤 、 439 一重 、 440 [虫偏に困] ( トカリ )、 441 ホロ 、 442 九留湏 、 443 砂蛤 、 444 ヤスリ 、 445 九輪 、 446 寄瀬 ( キセ )、 447 沓蛤 、 448 琴柱 ( コトチ )、 449 海麻 、 450 鵙介 ( ミサゴガイ )、 451 塩螺 、 452 海臼介 、 453 石川介 、 454 堝介 ( ルガイ )、 455 一文字介 、 456 蜘唄 、 457 玉章介 ( タマヅサガイ )、 458 百百重螺 、 459 ヒヨケ介 、 459 流螺 、 460 千千螺 、 460 蜀紅螺 、 461 蜘介 、 462 珠介 、 463 蛸舟介 、 464 鸚鵡介 、 465 絹被 、 466 シヤコ 、 466 扇介 、 467 ヒタチオビ。




ルリガイ

瑠璃貝

本朝食鑑 12巻 人見必大著 1697年
庶民が日常口にする食品を本草綱目にならった形で解説したもの。 第10巻の中に 貝の名として62種(*)が出ている。


*) 1 鰒 ( アワビ ) 、 1 鮑 ( アワビ ) 、 1 石決明 、 2 ( トコブシ ) 、 3 牡蠣 ( カキ ) 、 4 蛤 ( ハマグリ ) 、 4 蛤 ( ウムキ ) 、 4 白[虫編に令] 、 4 蜯蛤 、 4 含漿 、 4 海蛤 、 4 扽耳蛤 、 5 浅蜊 ( アサリ ) 、 5 文蛤 ( イタヤ ) 、 6 車渠 ( イタラ ) 、 7 蜆 ( シジミ ) 、 8 蚶 ( キサ ) 、 8 瓦壟子 、 8 魁蛤 、 8 赤貝 、 9 猿頬 、 10 [虫偏に夜] ( タイラギ ) 、 10 江瑤柱 、 10 玉珧 、 10 海月 、 11 蟶 ( マテ ) 、 12 総角 ( アゲマキ ) 、 13 馬蛤 、 13 馬刀 、 13 烏貝 、 14 海松蛤 ( ミルクイ ) 、 14 水松 、 14 淡菜 、 14 殻菜 、 14 海[虫編に坒] 、 14 東海夫人 、 14 淡菜蛤 、 15 蚌 ( ナガタガイ ) 、 16 烏蛤 ( カラスガイ ) 、 17 雀貝 、 18 栄螺 ( サザイ ) 、 19 辛螺 、 20 大辛螺 ( アキ ) 、 20 小辛螺 ( ニシ ) 、 20 蓼螺 、 20 赤口螺 、 21 長螺 ( ナガニシ ) 、 21 香螺 、 21 夜啼螺 、 21 ( ヘナタレ ) 、 21 海鳥 、 22 鸚鵡螺 、 23 海螄 、 24 宝螺 ( ホラガイ ) 、 24 梭螺 、 25 田螺 ( タニシ ) 、 25 螭螺 、 25 田臝 、 26 蜷 ( ニナ ) 、 26 河貝子 、 26 蝸臝 、 26 螺螄 、 27 蝸牛 、 28 貝 ( バイ ) 、 29 貽貝 ( イノカイ ) 、 29 黒貝 、 30 白貝 ( オオノガイ ) 、 31 潮吹蛤 、 32 蜃 、 33 馬鹿蛤 ( バカガイ ) 、 33 馬珂 、 33 大野貝 、 34 帆立蛤 ( ホタテ、イタラ、イタヤ ) 、 34 文蛤 、 34 車渠 、 34 海扇 、 35 紫貝 ( ウマノクボ ) 、 35 宝貝 、 35 大貝 、 35 盤孟 、 35 子易貝 、 36 醋貝 ( スガイ ) 、 36 玉蓋 、 37 錦沙子 ( キサゴ ) 、 37 錦貝 、 38 石陰子 ( カセ ) 、 39 花貝 、 40 梅花貝 、 41 桜貝 、 42 千草貝 、 43 瞿麦貝 、 44 増尾貝 、 45 蘇木貝 、 46 忘貝 、 47 妹背貝 、 48 袖貝 、 49 背見貝 、 50 片子貝 、 51 身無貝 、 52 空世貝 、 53 草鞋蠣 、 54 黄蠣 、 55 花蛤 、 56 紫蛤 、 57 白蛤 、 58 海紅蛤蜊 、 59 竹蟶 、 60 石蟶 、 61 馬軻螺 、 62 海螄 。





大和本草 貝原益軒著 1708年
著者自身が旅行によって得た動植物の知識にもとづいているため、独創性の高い内容となっている。 第14巻が介類に属し海蛤、螺の2綱に分けて40品を解説している。他に付録として6種、 陸虫の部に蝸牛1種、別図29個など74種が出ている。(*)


*) 1 蝸牛 ( カタツブリ ) , 2 蛤蜊 , 3 蜆 ( シジミ ) , 4 浅利貝 , 5 波遊 , 6 文蛤 , 7 蚌 ( ドブガイ , カラスガイ ) , 8 馬刀 ( ミゾガイ ) , 8 烏貝 ( カラスガイ ) , 9 淡菜 ( イガイ ) , 9 東海夫人 , 10 西施舌 ( ミルクイ ) , 11 白貝 ( シラガイ ) , 12 鹽吹貝 , 12 潮吹貝 ( シオフキガイ ) , 13 海扇 ( ホタテガイ ) , 13 杓子貝 , 13 車渠 , 14 朗光 ( サルボ ) , 14 螂[虫偏に晃] , 14 馬ノ爪 , 15 貝子 ( タカラガイ ) , 16 蚶 ( キサ , イタラガイ , アカガイ ) , 16 魁蛤 , 16 瓦壟子 , 17 石ワリ貝 , 18 ワスレ貝 , 18 海月 , 19 石决明 , 19 鰒魚 , 19 鮑 ( アワビ ) , 20 牡蠣 ( カキ ) , 21 草履蠣 , 22 黄蠣 , 23 大貝 ( オオガイ ) , 24 海鏡 , 24 月日貝 , 25 タコブネ , 26 烏稔 , 27 ネヂ貝 , 28 巻貝 , 29 鳥貝 , 30 バカ貝 , 30 馬軻螺 , 31 [虫偏に夜] ( タイラギ ) , 31 江瑤 , 31 玉珧 , 32 ツヅラ貝 , 33 ウミタケ , 34 竹蟶 ( マテ ) , 35 [虫編に戚] ( ヨメノサラ ) , 35 アゲマキ , 36 オキガキ , 37 コロビガキ , 38 辛螺 , 38 蓼臝 , 39 光螺 ( ツベタ ) , 40 甲香 , 41 刺螺 ( ハッキ ) , 42 梵貝 ( ホラガイ ) , 42 法螺 ( ホウラ ) , 43 チシャコ , 44 甲貝 ( コウガイ ) , 45 栄螺 ( サザエ  ) , 45 鎌倉小栄螺 , 46 河貝子 ( ミナ ) , 46 蝸臝 , 46 螺螄 , 47 鸚鵡螺 , 48 珠螺 , 49 ウケツ , 50 海臝 , 51 バイ , 52 子安貝 , 53 鑚螺 , 54 辣螺 , 55 田螺 ( タニシ ) , 56 赤螺 , 57 分殻 ( ワレカラ ) , 58 片貝 ( カタカイ ) , 58 老蜯牙 , 58 牛蹄 , 59 紫貝 ( ムラサキカイ ) , 60 アマリ貝 , 61 子安貝 , 62 マガリ , 63 紅蛤 , 64 彌勒貝 , 65 タチ貝 , 66 シリタカミナ , 67 ニシ , 68 山椒貝 , 69 梅花貝 , 70 アメ , 71 ホウザイ , 72 海ホウザイ , 73 ヨメノ笠 , 74 オキニシ 。




アワビ 鮑



和漢三才図会 80巻 寺島良安著 1713年
三才とは天地人の3を指したもので、本書は絵入りの万有全書ともいうべきもの。 第47巻が介貝部になっている。貝類67種、図は42個(*)。 惜しいことに図は精密を欠き、水波海藻などの添景を用いて非科学的。むしろ貝類と人生との かかわりを述べることに注力し、水産製造や貝殻工業に関する記事もあれば諸国の風俗、唐土の 諸説などもあり興味深い。


*)鰒(アワビ)、真珠(シンジュ)、牡蠣(カキ)、蚌蛤(ナガタガイ、ドブガイ)、丼貝(ドブガイ)、 馬刀(カラスガイ)、玉珧(タイラギ)、海鏡(ウミカガミ)、蟶(マテ)、 アコヤガイ、蜆(シジミ)、文蛤(ハマグリ)、蛤蜊(シオフキ)、浅蜊(アサリ)、阿座蛤(アザガイ)、 鳥蛤(トリガイ)、アカガイ、 車渠(ホタテガイ・イタヤガイ)、板屋貝(イタヤガイ)、車螯(ワタリガイ)、貝子(コヤスガイ・タカラガイ)、 紫貝(ウマノクボガイ)、珂(クツワガイ)、貽貝(イノカイ)、 馬鹿蛤(バカガイ)、ミルクイ、海蛤(ウムギノカイ)、香螺(ヨナキ)、蓼螺(ニシ)、赤辛螺(アカニシ)、 栄螺(サザエ)、田螺(タニシ)、バイ、 蝸螺(ミナ)、宝螺(ホラノカイ)、鸚鵡螺(オウムガイ)、老海鼠(ホヤ)、幾左古(キサゴ)、 錦貝(ヤコガイ)、郎君子(スガイ)、 海燕(モチガイ)、陽遂足(タコノマクラ)、霊螺子(ウニ)、石*(カメノテ)、寄居虫(ゴウナ)、 貝蛸(カイダコ・タコブネ)、トコブシ、サルボオ、他。







アサリ 浅利

浅利

日東魚譜 4冊 神田玄泉著 1730年
日本最初の魚介図説。石決明7種、蛤類53種、他33種 、計93種の貝(*)を図解している。 玄泉は江戸市井の医者。


*) 蜷螺(カワニナ)、蜆(シジミ)、扁螺(ゴミカイ)、(ドブガイ)、蚌(アワガイ)、田臝(タニシ)、 蝸臝(カタツブ)、螺螄、牡蠣(カキ)、牡蛤、蠣蛤、古賁、蠔、文蛤(ハマグリ)、花蛤、「虫偏に感の上」、 「虫偏に進」、アサリ、生「虫偏に進」、「虫偏に感の上」蛤、蛤蜊(トリガイ)、蜆蛤(シジミ)、 蟶(クダマキ)、竹蟶、馬刀(マテ)、馬蛤、斉蛤、魁蛤(アカガイ)、魁陸、蚶、尾壟子、伏老蛤(ハイガイ)、 「螂の右が月」「縨の左が虫」(サルボオ)、朗光、朗光(シオフキガイ)、檐羅(バカガイ)、 鼠尾蛤(メクバシャ)、淡菜(イガイ)、殻菜、海「虫偏に陸の右」、東海婦人、西施舌(ミルクイ)、 海筍蛤(ウミタケ)、底蛤、馬甲(タイラギ)、馬頬、馬刀、石决明(アワビ)、九孔螺、鰒魚(トコブシ)、 石陰子(ヨメノサラ)、「鰄の左が虫」、榮臝(サザエ)、小栄螺(コサザエ)、丹師螺(二シ)、 白師螺(シラニシ)、假猪臝(バイ)佗羅、貝子(タカラガイ)、貝歯、白貝、海「貝偏に巳」、 紫貝(コヤスガイ)文貝、研螺、鳥稔(ミノガイ)、鳥粘、沙箭、江橈(ベニガイ)、指甲螺、紅葉螺(モミヂガイ)、 流螺(ナガニシ)、丹師螺、蓼螺(コニシ)、辛螺、辣螺、梵貝(ホラガイ)、梭尾螺、法臝、 海月(タマガイ)、玉珧、江珧、海鏡(ツキヒガイ)、鏡魚、膏薬盤、石蜐(カムリガイ/カメノテ)、 紫「虫偏に去」、紫「呂と呂の間に草冠、工、貝」、亀脚、鸚鵡螺(クケツガイ)、九穴貝、不結、 鶉臝(ウズラガイ)、餘蛤(アマリガイ)、空貝(ウツセガイ)、紫蛤(ムラサキガイ)、烏蛤(カラスガイ)、 鑚臝(タケノコガイ)、角貝(ツノガイ)、珂(タマガイ)、馬珂螺、蝸螺(タマ)、小蝸螺(キサゴ454/イサゴ)、 鈿螺(クルマガイ)、龍螺(リュウガイ)、光螺(ツメタ)、牽牛花螺(アサガオガイ)、車渠(シャゴウ)、 海扇(ホタテガイ)、阿布岐加伊(オウギガイ)、板屋蛤(イタヤガイ)、杓匕蛤(シャクシガイ)、 螺螄(ミナ)、結螺(ムスブガイ)、艸裏螺(ツトガイ)、鹿子貝(カノコガイ)、小法螺(コホラ)、 即君子(スガイ)、(ツミ)、(シタタミ)、(シツタカ)、小螺師(ワレカラ)、京螺(ミヤコガイ)、 羽蛤(ハガイ)、章魚舟(タコブネ)、青螺(アオガイ)、忘蛤(ワスレガイ)、簾蛤(スダレガイ)、 梅花蛤(ウメノハガイ)、桜蛤(サクラガイ)、柳貝(ヤナギガイ)、籰麥蛤(ナデシコガイ)、 海菊(ウミギク)、日本撫子(ヤマトナデシコ)、錦蛤(ニシキガイ)(モミジガイ)、 緦手縛(オダマキガイ)、飴螺(アメガイ)、天狗螺(テングガイ)、菱螺(ヒシガイ)、 千鳥貝(チドリガイ)、雀貝(スズメガイ)、風蛤(カゼガイ)、舟蛤(フネガイ)、袂貝(タモトガイ)、 袖貝(ソデガイ)、蛍貝(ホタルガイ)、碪石蛤(キヌタガイ)、乙女蛤(オトメガイ)、瓶蛤(カメガイ)、 珠柏(タマガシワ)(ナミカシワ)、石蛇(ヘビガイ)(マガリガイ)




ウミギク

海菊

貝盡浦の錦 2巻 大枝流芳著 1749年
日本における印刷された最初の貝類書。貝に関連する趣味的な事が記されている。 著者自ら後に序して、「大和本草その他もろこしの諸書介名多しといえども是れ食用物産の ために記す。この書はただ戯弄のために記せしものなれば玩とならざる類は是を載せず」 と言っている。
記述されている貝は約220種(*)で、上巻には和歌浦真図、歌仙貝遺漏百余品、 住吉浦潮干図、前歌仙貝三十六品評、但馬竹浦真図、後歌仙貝三十六品評、源氏貝配富目録、 新撰歌仙貝、下巻には前歌仙貝並図、後歌仙貝並図、貝蓋図式並貝合わせやう指南、相貝経などが 掲載されている。


*)ハギノツユ2087、モノアラガイ6650、 クボガイ、イシダタミ、コシダカガンガラ、 カタベガイ、カズラガイ、アクキガイ、オニサザエ、アラレガイ、ムシロガイ、 マツムシ、キセワタ、ブドウガイ、ヤカタガイ、オチバガイ、スダレガイ、他。





怡顔斎介品 2巻 松岡玄達著 1758年
出版は1758年だが著者の序文は元文5年(1740年)であるため貝盡浦の錦より早い。 蛤類29種、螺類14種、和品72種、蟹類18種、蝦類11種、その他13種が掲載 されている。(*) 介とは貝の他に蝦や蟹も含まれ、その中で漢名の不明なものを和品と称して いた。主として実地の見聞に基づいて編まれており、書中40余種の新出項目を有し 貝盡浦の錦とともに我が国貝類学上に多大の衝動を与えたものである。


*)オトメガサ76、 エビスガイ、ヒガイ、孔雀貝(クジャクガイ)、筆貝(フデガイ)、朝顔貝(アサガオガイ)、 山椒貝(サンショウガイ)、ヨメガ皿、巾着貝(キンチャクガイ)、絹笠貝、 忍貝(シノブガイ)、他。





奇貝圖譜 1冊 木村蒹葭堂著 1775年
紀州蔵介家の美介を写生した彩色図(*)、蘭書の貝図の模写、各産地の名貝、食用的記事、 蔵貝家の名簿などを掲載した雑記である。この中にベニオキナエビスが図示されており、 「無名貝 拇あげまきの一種ならん」と記されている。


*)子シヌキ(=チマキボラ)、隠蓑介(=オニムシロ)、無名介 拇アケマキノ一種(= ベニオキナエビス)、水吹介、ヒヨケ介(スイジガイ)、花仙、海兎介、糸掛介、比翼介、蜀紅螺、 芭蕉介、紅シボリ、他。




ベニオキナエビス  紅翁戎

紅翁戎

本草綱目啓蒙 全48巻 小野蘭山著 1802年
第42巻が貝類である。解説する貝は29品(*)に過ぎないが、説明は詳細を極め、貝の名は 約310におよぶ。本書の特長は第一に、或る種を記載する場合に、最初にその異名を 悉く列挙するという唐土の学風を採用しているという点である。これは他の本草書や貝書でも 容易に実行し得なかった点である。特長の第二は漢名に対する和品の適合であって、従来 本草学において最も苦心した事業も蘭山に至ってようやく定説を見るに至った。


*)アカニシ2777、ナガニシ3507、 カタツブリ、マイマイ、他。




アカニシ  赤辛螺

赤辛螺

渚の丹敷 上下2巻 曾永年著 1803年
上巻は二枚貝、下巻は巻貝で、合計123項、540品。付録54品を載せている。(*) 緒言によれは美麗な彩色図があるはずだが詳細不明。曾永年は通称を占春といい、薩摩候 島津重豪の記室。占春は貝類を記載するに当たり、ある1個の代表種を題目に掲げ、 類似のものはその下に取り纏めて記するような方式をとった。


*)コシタカガンガラ402、ヒラサザエ565、ゴショグルマ5179、ツメタガイ2027、ユキガイ943、 ホシダカラ、キヌボラ、リュウグウボタル、アサガオ、クチベニ、他。





六百介品  5冊(又は6冊)
約600個の貝(*)を彩色図とし、漢名や和名を付けたもの。この書は丹敷能浦裏とともに 日本の貝類書として重要な位置を占めるが、共に著者年代の記録が無い。


*)スカシガイ113、エビスガイ298、ナツモモガイ436、クボガイ397、カタベガイ520、 ヤコウガイ528、サンショウガイ566、リンボウガイ563、タマキビ930、 エビガイ1380、キヌガサガイ1667、ツグチガイ1887、クマサカガイ1656、カズラガイ2144、 マツカワガイ2188、オキニシ2254、アクキガイ2509、オニサザエ2531、バショウガイ2554、 ミズスイガイ2811、マツムシ2901、ムシロガイ2993、ミクリガイ3254、マユツクリ3271、 ホタルガイ3569、ミノムシ3795、アコメガイ4801、トクサガイ4863、アサガオガイ4978、 ネジガイ5011、オダマキ5126、 クルマガイ5165、ベニシボリ5973、ブドウガイ6122、 クジャクガイ218、ヒヨクガイ417、キンチャクガイ426、ハナイタヤ442、ウミギク471、ウミアサ618、 シオフキ915、ベニハマグリ916、 ベニガイ981、オチバガイ1118、ムラサキガイ1122、 フジナミ1124、スダレガイ1345、ワスレガイ1381、他。




忘貝

忘貝
紫竹貝

紫竹貝

宇治久老貝図 1冊 荒木田久老著
貝、螺、蛤、雑、無對の順に配列し、387種(*)を墨絵で写生している。標本は紀州、 伊勢、尾張、遠州、相模などのもので、土地の方言を付記したものもある。 図はかなり正しく、多くは正面図を描いている。名称の他、簡単な解説や産地的記述を 加えたものもある。著者は伊勢外宮祠官で万葉学の第一人者。


*)フクロガイ2109、ショウジョウガイ481、 オトメガサ、ヤコウガイ、リンボウガイ、バショウガイ、サツマビナ、 トクサガイ、ナツメガイ、マルツノ、タツナミガイ、アキタガイ、他。





丹敷能浦裏  3巻
介類569品(*)を図解した彩色画譜で毎葉その上段に図を示し、下段に解説が記載されている。 図は精細で解説も適切。


*)アザミガイ548、ヒガイ1925、ホネガイ2517、ヨウラクガイ2671、レイシ2760、 タケノコガイ4933、クレハガイ5129、 ミルクイ942、キサガイ958、シオサザナミ1099、他。




ヒガイ

杼貝

シオサザナミ

汐小波

紀州田邉介品書上目録 1冊 1814年
田辺の町奉行が藩主の命を受けて調べて書き出した紀州の介類目録である。 牛の鼻の角貝、佛岩の舎利貝、珊瑚砂の3種を土地の名産として書上げ、シコロ貝以下 196種を浜辺に上がるもの、ザクロ貝以下39種を浜辺に上がる小貝、キセル貝以下 10種を山澤にあるもの、イトカケ貝以下69種を縄はへ(はえ縄?)に釣られて上がる ものとし、合計317種の貝名を載せている。 翌年この調査を行った堺屋喜右衛門はこの目録に定価を付けた「田邉介價録」を作成した。 これによると絲掛介(オオイトカケ)は金5両、海兎、隠レ蓑(オニムシロ)は金1両、水汲介・猩々介・ヒタチ帯などは金2歩 である。






介集図説 2巻
1冊は図で1冊は解説である。図は介691品を墨絵に描き、図柄は六百介品と 同じだが、蚌、蛤、螺、無對などを集類してある所が異なっている。解説は丹敷能浦裏と 同一。本書は原著ではなく既成の書の改作で、群分品彙の草稿であるかもしれない。






観文介譜 1冊 堀田正衡著 1830~1843年
介類213品(*)の記事を諸書から集録したもの。 著者は佐野藩2代藩主で後に幕府の若年寄となり、博物家でもあった。


*)テンガイ111、ウミニナ1449、チリメンダカラ1672、ヤタテガイ3729、サクラガイ1036、他。




サクラガイ 桜貝

桜貝






介品(五百介圖) 1冊
浄貞五百貝圖よりも寧ろ六百介品に似たところがある。和歌山の書は墨絵で同藩の博物学者 小原良直の印がある。


*)ヤツシロガイ2125、アメガイ2165、タイラギ315、イナミガイ1277、ネリガイ1504、他。




玉珧 タイラギ

玉珧 タイラギ







藤渠介品11巻 大垣侯著
いろは順に配列し六百余種を彩色図としている。





マツカワガイ 松皮貝

松皮貝

甲介群分品彙  2冊 武蔵石寿著 1836年
図は六百介品のをそのまま模写し、蚌、蛤、螺、無對、異形の5類に分類したもの。(*) 解説は丹敷能浦裏から転写している。


*)ホシダカラ1768、ウミウサギ1881、ツツミガイ2114、ミヤシロガイ2132、アラレガイ2990、 キヌボラ3039、ツノキガイ3471、リュウグウボタル3559、サツマビナ3585、 フデガイ3677、ショクコウラ3967、ルリガイ4979、オオイトカケ5054、 セキモリ5127、マキモノガイ5332、ヤカタガイ5969、ナツメガイ6093、 タコブネ200、チヨノハナガイ947、モモガイ1462、他。





目八譜  15巻 武蔵石寿著 1843年
貝類997種(*)を無對、蛤蚌、蟶蠣、螺形、拳螺、刺螺、円螺の7種に類別して写生し、 詳細な解説を附した極彩色の貝譜で、石寿が最も心血を注いだ書である。
本書の原本は明治35年に白井光太郎博士が東京の一書店で偶然に発見し、帝国図書館に 納めた。そのため関東大震災の災害を免れ、現在も完全に残っている。

図は服部雪斎が描き、本書に貼り付けてあります。現在は 国会図書館のWebサイトで公開されて いるため、以前に比べると簡単に閲覧できるようになりました。

*)オキナエビス3、トコブシ9、クズヤガイ103、ユキノカサ169、ツタノハ118、カサガイ123、 マツバガイ124、ヨメガカサ125、 イシダタミ381、ヘナタリ1443、ハナマルユキ1763、ジュセイラ2193、ホラガイ2242、ボウシュウボラ2243、 バイ3324、ベニマキ3478、チマキボラ4642、ベッコウイモ4680、キセワタ6054、 オオムガイ1、 サルボウ153、イガイ216、アコヤガイ335、ウメノハナガイ620、 トマヤガイ803、トリガイ902、バカガイ914、マテガイ1144、アサリ1340、クチベニガイ1431、 ウミタケ1452、マルツノガイ16、他。
ハナマルユキ 花丸雪

花丸雪
ベッコウイモ 鼈甲芋

鼈甲芋

介志  10巻(志5巻、図5巻) 畔田伴存著 1849年
15属2233種、2360品の貝(*)を図示し、我が国の古文献中で介図が最も豊富である。 図は墨絵であるが正確で、志は簡潔で要領を得ている。カラスキ、カンスガイ、ニワトリガキ、 ヤミノニシキなど多くの和名はこの書から出ている。 本書は目八譜とは系統を異にし、貝の名称も一致しないがそこに研究資料としての価値を 認めることができる。

本書の作成年代について金丸但馬氏は、「本邦貝類書解題(3) VENUS 1(3) 1929」において 天保年間(1830~1843年)、「日本貝類学史(24) VENUS 11(2-3) 1941」 において、「目八譜より後」としていますが、畔田伴存が堀田龍之助に宛てた手紙によると 嘉永2年(1849年)7月になります。

*)カンスガイ549、トウイト3261、カラスキ2556、カセンガイ2827、カガバイ3395、モミジボラ4132、 シマアラレミクリ3267、ミオツクシ3263、シノブガイ5100、ツバメガイ324、カゲロウガイ322、ニワトリガキ351、 ヤミノニシキ429、オイノカガミ1331、カモジガイ941、セミアサリ1399、他。










ヤミノニシキ 闇の錦

闇の錦



オトメダカラ

オトメダカラ





[home]